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2013年8月31日土曜日

上達は聴くことから

ピアノが上達する方の大きな特徴は聴こうとしている事です。


見ることに慣れている私たちは意識しないと聴くことはなかなか出来ません。いつも何かをしながら聞いている現代人は、聞こえることと聴くことを同じに捉えがちです。

そもそも人の話を聞く、自分の言ってることを聞く、
これがどれほど難しいか。

人の話を聞いているようで聞いていない、自分が話したいだけの話しっぱなし、自分が何を話しているかわかってない、相手の言うことは聞きたいとこだけ聞いている。。。
私自身、反省してもまた同じことをしています。年を取るとその傾向が強くなるのは、自分の人生にそれなりの自負があるため、人の話がそんなに重要でなくなるのでしょうか。

このことを音楽に置き換えると、大げさに言えば、致命的です。
人の話を遮って話したり、受け答えにならない自分の話だけしていては、ここちよいコミュニケーションが取れないのと同じで、そんな一方通行で良い音楽が生まれるはずがないのです。

演奏も、相手の事を考えずに自分一人で好きなように弾いちゃうと、一人でしゃべって自己満足しているうるさい人になっちゃいます。

おしゃべりをやめて、手を休めて、心を開いて人が弾いているものを聴いてみて下さい。自分が弾いている音も目を閉じて耳だけに集中して聴いてみて下さい。耳だけで聴くと心に届きます。
注意も、先生の模範演奏も、自分の出している音も、弾いている曲も、聴いている人の心も聴く。

聞こえるのではなく聴く、、、
聴くのが苦手な方には届かないかな〜











子供のピアノ 大人のピアノ


「将来、楽しく気持ちよく弾けるように」習っているのが子供

「今、楽しく気持ちよく弾くために」習っているのが大人


という感じがします。

よく子供は上達が早くていいわね、と大人の方は言いますが、子供は耳がいいというだけではなく、ちゃんとやってるから上達が早いと思っています。
子供は新しい漢字5個を明日までに10回ずつ書いて来るというような学校の宿題を眠くても毎日やっています。ピアノも同じで「来週までにこの和音3つを書いて、そして弾けるように」という宿題を出したら、運動会があっても書いて来るし、上手でなくても一応弾いて来ます。
でも大人は書く宿題は弾く事に関係ないと思っちゃうし、親戚が来たり仕事が忙しかったら、弾けなくてもしょうがないってことになります。

子供は宿題をやっていかないと「やらないと弾けるようにならないよ」と怒られますが、大人は怒られません。講師側がなぜ怒れないかというと、大人だからというよりも、大人の方は「今」楽しむためにやっているので、嫌な事を我慢してやらせては、そもそもの目的と違ってしまうからです。

一番顕著に現れるのが練習の仕方です。
子供には指の練習を徹底的に、そして曲でも「片手練習、部分練習、ゆっくり、はい、リズムだけ、声だして」と切り刻んでやらせますが、大人には、この地道な練習をなかなか受け入れてもらえません。大人には他の事で培って来たその人なりのやり方があるのが大きいですが、「今楽しくない」事なので、ピアノを「今楽しみたい」から習っている大人の方に、そこを我慢してやらせる事は出来ません。

こんなふうに習い方自体に違いがあるのも、上達の差だと私は思っています。
子供って偉いなあっていつも思ってます。偉いから上達が早いんです。
そして、これを読んで「いやいや、私は今でなく将来のためにやっている」という大人の方や「そうか!子供のような練習をしよう!」と思った方は是非、書く宿題も先生に出してもらって下さい。
外国語と同じで書く事は、理解と定着に繋がります。
そしてもし、将来の上達を望んでいたら、先生に言われた地味な練習を地道にして下さい。他の事では皆様の方が優れていても、長年ピアノを弾いて、沢山の生徒さんを教えて来た先生は、ピアノの上達のしかたを知っています。

子供も大人も本当は一緒です。
急がば、回れ。







2013年8月28日水曜日

ピアノ、音楽、芸術で交流しましょう♪

第1回アルテ交流会が9月21日土曜日に決まりました!

アルテ会員の方だけでなく、オブザーバー参加も大歓迎ですので、ホームページトップの詳細ご覧下さい!http://www.hajimetepiano.org/。


今回は第1回目という事で説明会を兼ねていますので無料です!「何?アルテの会って」って方、是非覗きにきて下さい。

7月の室井先生のコンサートの模様は、色々制約があるのでほんの短いものですが、プロの撮影編集によるクオリティの高い仕上がりです。インタビューなどの秘蔵映像も入っています。

また「プレゼンテーション」は、聞いている皆様は、ダイジェストでアーティストの活動を楽しめ、発表する側はご自身のアピールの場となっており、相互の利害関係を満たす画期的な試みです(笑)。「いいね!」の沢山集まったプレゼンは改めてセミナーやホールの会などでご披露いただく予定です。今回は作曲家でジャズピアニストの藤田幹氏にお願い致しました。

更に、一番の目的である「芸術家同士の交流の場」として、毎回テーマを決めて座談会を行います。

習うだけ、教えるだけ、聴くだけ、見せるだけの芸術から、
日常の一部として楽しむ芸術を

のスローガンのもと、ご参加の皆様主導で広げられたらと思っています。
今回の座談会のテーマ「芸術×芸術 コラボレーションの可能性」はクラリネット奏者の横山さんからのご提案。討論会でもあり企画会議でもある、そんな交流会を目指します。
ピアノ初心者でも、他の趣味をお持ちの方も、そしてその分野のプロフェッショナルの方も、他の芸術分野と一緒に何かが出来上がる!と思うとワクワクしませんか?その可能性を探ってみたいと思います。

PRタイムもありますので、ご自身の直近の活動の宣伝などもしてください。
自分はこんな事が出来ます!というプレゼン希望の方もお待ちしています。
はじめての人ばかりで、、、という人見知りの方も、大丈夫。人見知りは私も負けません。そんな私がやっている会ですから、臆する事なくご参加ください。

お申し込みはホームページの「お問い合わせ」から、またはお電話、FAXでお願いします。







2013年8月25日日曜日

たかがピアノ

こんにちは。
今日もようこそお越し下さいました。

一応先生なので生徒さんに「先生くらい弾けたら楽しいでしょうね」と言っていただく事があります。でも、それは「先生くらい弾けるから」楽しいのでなく「ピアノが楽しい」から楽しいだけです。弾けなくて挫折を味わっているのは生徒さんだけでなく先生達もみな同じです。

音楽は色々な要素が合わさって成り立っているので、神様に近づくもの、といわれて来たそうですが、所詮神様にはなれないので、どんなピアニストも常に神の領域に近づきたいと願いつつ、なかなか近づけない悔しさも味わっているはずです。
大ピアニストでも満足はいかないし、きっと永遠にレベルに応じた満足不満足があるのではないでしょうか?

私は以前、ピアノの先生に怒られると全人格否定された気分になりましたが、そんな事考えてみたらあるわけがない。

たかがピアノ。たかが音楽。
生き甲斐にはなるけれど、なくても死なない、他を探せばいくらでも代わりはある。
でも自分にとって楽しい事だから頑張ろう、このくらいの気持ちでいいと思います。
弾けない自分を責めたり、ましてピアノごときで自分の人格を否定する事はしないで下さいね。

たかがピアノですから。







2013年8月23日金曜日

テクニックを身につける

少しイメージを持つ重要性を書きすぎてしまったために、誤解されそうなので、ハッキリ言っておきます。


テクニックがなければ、どんなイメージも伝わりません。テクニックのない表現力は存在し得ません。テクニックありきです。

「飛べるようになるには、飛び方を教えるのではなく、飛んだ時に見える虹を見せる」
http://www.blogger.com/blogger.g?blogID=130771376070540689#editor/target=post;postID=4220748410577405638;onPublishedMenu=posts;onClosedMenu=posts;postNum=18;src=postname

ような教え方に共感していますが、
でも結局虹を見るには本人が飛ぶしかない。

ピアノでいう「飛べる事」は「弾ける事」、つまりテクニックを身につける事です。
ピアニッシモの難しい事、指を速く動かす事の難しい事、、。
そんな練習をしないで表現出来るならこんな簡単な事はありません。指の練習やエチュードをやるのは、それをしないと「虹」に近づけない事を知っているからです。ある朗読家の方が「日本語だから読める。でもどんなに読む人に思い入れがあっても、技術がないと伝わらない」と言ってました。日本語でもそうなんです。

その曲が好きなだけ、思い入れがあるだけでは、人に伝わらない。伝えたいイメージが出来たら、次は練習あるのみです。ましてピアノなんて日常とかけ離れた動きです。飛ぶ練習は黙々と一人でやるしかありません。








2013年8月20日火曜日

主役と脇役

ピアノは主役になったり脇役になったりします。
音楽も主役になったり脇役になったりします。

私たちのようにピアノだけをやっていると、一人で完結出来る楽器なので、一人でやる事ばかりになってしまいます。いつも主役をやっている感じです。
でも脇役って一番味を出します。本物の演技力も必要です。脇役をやる事で幅広さもつきます。それによって主役をやるとき、ここは出るところじゃないとかもわかるんです。

もともと、美しいものという理想に近づく手段が音楽だったり、絵画だったりするはずなのに、目先上手に聞こえればいい、というように本末転倒になってしまっている気がします。なのではじめてピアノの会ではピアノの会と言いつつ他の芸術をとても大事にしています。

近々、はじめてピアノの会で芸術同士のコラボレーションの会「第1回アルテの交流会」を開催します。「どんな芸術がくっつくと面白い?」とか「こんな事してみたい!」「こんな事が出来ますがお役に立てますか?」とか、見ている人もやる側も新たな視界が開ける企画をワイワイ話し合いたい思います。交流会ですので、その場でお知り合いになった方同士何かに発展してくれたら、望むところです。自分は何も出来ないけど興味があるっていう方も大歓迎です。こちらのブログとホームページhttp://www.hajimetepiano.org/で近日中にご案内します!


2013年8月18日日曜日

プロフェッショナル論


職業として選ぶからには、
才能より努力出来るかどうかにかかっていると思います。


好きじゃない仕事を人のために仕方なくしているという人も世の中にはいるでしょう。でもだからってそれ、胸を張れることじゃありません。「楽な仕事はない」という愚痴を言う方には「どうぞラクして下さい、お金は払いませんから」って思います。

マーフィーの言葉に「これをやろうと決めたら、誰よりもその知識、技術を習得する事」というのがありました。夢を叶えるのも仕事を成功させるのも、この一言に尽きると思います。私は自他ともに下手を認めていますが、最近それはネタじゃないかと疑惑をかけられました(笑)。とんでもありません。それを隠す方が当然楽です。が、それでは詐欺になってしまうので素性を明らかにしているだけのことです。しいていえば、このカミングアウトが唯一私の「楽な仕事はない」の部分です。でもその分、怠けずに勉強し続けることが、せめてもの私のプロフェッショナル哲学です。

ピアノの先生は密室でのお仕事、生徒が下手なのは生徒のせい、生徒が上達するのは先生のおかげ、何をしていても何をしていなくても実は成り立つ仕事です。
でも、誰よりも知識技術を習得することを怠けずにやる、これがプロフェッショナルの資格ですよね。昨日友人が大学教授のご主人に「好きな事だけしてていいわよね」と嫌みを言ったら「僕はこの好きな仕事をするために努力も苦労も充分している」と言われたそうです。努力する覚悟、苦労する覚悟。

才能があろうがなかろうが、好きだろうが嫌いだろうが、苦労しようがしまいが職業として選んだからには言い訳せずに学び続ける、そしてその分、(芸術であっても)堂々とお金はもらう、これがわたしのプロフェッショナル論です。




2013年8月12日月曜日

ピアノをやめたくなったら、、、大人編

お盆休みも暑い日が続きます。
洗濯物があっという間に乾くのが面白くて、15分ごとに触ったりして。


大人の音楽とのつきあい方は、強制されない分微妙です。
「上手にならないのに、続ける事に意味はあるのだろうか?」
「お金かかるからやめようかな?」。。。

答え:音楽は続けることに意味があります。

アマチュアの方がやめたくなるのはだいたい上手にならないから、だと思いますが、何十年やっても未だ上手にならない私からすれば「簡単に上手になると思うなよ」って所です。上手にならないからやめていたら、たぶんやってる人は一人もいないし、上手になる人も一人もいないでしょうね。まして大人は頭も体も成長ではなく衰退に向かうので、上手になることは簡単ではありません。

それでも上手になることは是非目指して頂きたいのですが(以前にも理想が大事と書きました)、それ以外にも音楽にはいいことが沢山あります。
認知症の老人施設に音楽療法で行っていた時、皆さん無表情で全く反応なく
「あ〜、、、全く喜んでもらえてない、、、」ととても落ち込んでいたのですが、
施設長さんから
「とても効果があるので回数増やして下さい!」と言われびっくりしました。
音楽ってそのとき目に見える効果はなくても、いつも一緒にいる人から見れば、表情が違うとかほかの事も積極的にやろうとするなど心の影響がとてもあるらしいのです。食欲がでるとか、夜起きにくいとか。。

そんな効果のある事、せっかく自分でできるのならやった方がいいです。
踊らにゃ損ソン。

職業にしている方はまたちょっと違いますよね。。。
「ピアノがやめたくなったら、、、ピアノの先生編」、
これはピアノの先生たちと会ってお話ししたいテーマです。





2013年8月10日土曜日

ピアノをやめたくなったら、、、子供編

今日も読んで下さってありがとうございます。


高い楽器を買ったり、高いお月謝を払ったり、音楽の習得にはお金がかかります。

なので子どもが練習しなくなったとき、お金をドブに捨ててる気持ちになりますよね。
そのお金があればあれもこれも出来るって腹立たしいのはごもっとも。
ですから「子どもが練習しないので、お月謝がもったいないのでやめます」と言われた時、「確かに」、と思っていました、昔は。

でも本当は全然「確かに」じゃないんです。捨てていると思ったお金は捨ててないんです。これを捨てていると言ったら、人生のほとんどのお金捨ててることになるくらい、捨ててないんです。

大人の方が聞いたらがっくりするでしょうが、どうしても子供のときせめて若いときにしか身につかない事があります。大人がどんなにお金を出しても努力しても身に付かない事が、子供の時の楽器と月々のお月謝で「ドブに捨てている」と誤解するくらい自然に身に付きます。たとえ練習しないでレッスンに行く時が続いても子供自身が「やめたい」と言ってもこの時期を逃したら身に付かない事がある、と思って下さい。

これがわかった今は、金儲けと思われようとも親御さんに「楽器を買って下さい、やめないでお月謝払い続けてください!」と言っています。
逃げずに向き合っていく力、というオマケもついてきますよ。

空気が空気じゃないみたいに暑い1日でした。おやすみなさい。

2013年8月9日金曜日

練習は裏切らない

「練習は裏切らない」という言葉をよく使います。
でも、たくさん練習すれば本番うまくいく、、、、と取られると、ちょっと違います。

まずは、練習と言ってもどんな練習をしたか。
何回弾いたとかだけではなかなか上手にはなりません。私の先生は「気持ちよく弾くのは練習になってない」と言っています。面倒くさい根気のいるいや〜なイライラするような地道な練習が練習です。1曲を両手でテンポで通しで弾くって、サッカーで言う「試合」だけしてるようなものです。そんなことありえませんよね。

次に[裏切らない]とは[本番でうまく弾ける]事とは限りません。もしかしたら根っこを伸ばしている最中だと、逆に失敗しちゃうかもしれません。でも本当の力はじわりじわりとついていきます。

練習は裏切らない。
この言葉が好きになるまで練習してみて下さい。
その結果見える新境地、それが「裏切らない」ってことだったんだと今私は思います。

練習時間、もっと欲しいな〜。。









コーチング

こんばんは。
今日「コーチング」の「コーチ」に「コーチング」して頂く機会がありました。

普段漠然と思っている事を言葉にして、声に出して、やり取りしてみたら「あ!そうだったんだ、、、」という事が沢山ありました。
わかったつもりでわかってない事。。
ずいずい掘り下げてみるつもりです。

おやすみなさい。







2013年8月5日月曜日

「譜を読むのに精一杯で音楽を語れるレベルじゃありません」

と、言われました。

以前にも書きましたが、音楽には色々な楽しみ方がありますので、自己満足でレベル以上の曲をとりあえず弾く事を良しとしても別に悪くはないんです。が、真面目な私としては、一応本当の事を言っておきます。


「語るレベルではない」という方はレベル以上の曲を選んでいるだけの話です。
「そしたら8小節くらいの曲になっちゃう!」という方はそれが貴方のレベルです。



辞書を引きながらやっと読んだシェイクスピアを原語で人前で話すとなると、私のような英語が出来ない人間は、大変な努力に努力を重ねても、棒読み出来たらすごいくらいで、感情を込めるなんてぜったい出来ません。発音はもちろんジャパニーズイングリッシュ、意味不明でしょうね。。。。

レベル以上の曲をやっと譜読みして弾く、というのは、こういう事です。

が、幸い?な事に音楽には言葉がないので、「スラスラ外国語を話している!」みたいに、感嘆して聞いてくれたりする人もいるんです。でも、それって比較の問題で、もっとさらさら話す人が出て来たらアウトです。早さや量の限界に達するのはスグです。むなしくなるのはわかりきっています。ピアノをやめる人のほとんどがここに捕われています。

8小節の曲、多いに結構。そこからです。
上辺だけの快感を捨てて、外国人とお話をするような気分で
伝えようとする音楽を始めませんか?

初見でノーミスで弾ける位のものを、英語の発音を正すように音色を聴きながら弾くよう心がけると、何かが変わって来ます。レッスンでそれを嫌々やっていた小2の男の子は、最近、「う〜ん、これは思った音とは違うんだよね〜」と自分で考えることに目覚めて来ました。

辞書を引くお手伝いもいいですが、そればかりではレッスンもったいないです。












2013年8月2日金曜日

「音楽に語らせるってどういう事ですか?」

タイトルの質問を受けました。
言われて初めて伝わっていない事を知りました。

曲を解釈するとき、作曲家、国、時代、作曲された時の作曲家の年齢、状況という作品背景と、様式や形式、和声と言った専門的な事と、それ以外に、「情景」を想像するという事があります。

様式などは決まった事ですが、この「情景」解釈は人によって違います。


たとえば、、、。
発想記号エスプレッシーヴォ(表現豊かに)4分の3拍子ニ短調の曲があったとします。

1)短調の激しいアルペッジョで始まる フォルテ
        ↓
2)ゆっくりの短調になる ピアノ
        ↓
3)明るい長調になる メゾフォルテ
        ↓
4)和音の連続の短調になる フォルテ
        ↓
5)最初の激しいアルペッジョの部分がまた出て来る フォルテ
        ↓
6)短調のまま、けれど静かに終わっていく ピアノ リタルダンド


この曲をとりあえず[愛する人とお別れした女性の映画]と仮定してみます。
すると上記の番号はこんな解釈が出来ます(たとえば、の一例です、念のため)


1)は、外の激しい雨風の風景描写(樹が揺れたり雨音が激しい感じのフォルテで弾く)

2)は、風景から心情へ。雨を見つめる横顔、別れ話に沈む女性(沈んだ心と別れのさび
  しさを思い詰めたようなピアノで弾く)

3)は、空想。恋人と踊ったり笑ったりした楽しかった時代にタイムスリップ(その頃の
  楽しい気持ち テンポよく弾むようにメゾフォルテで弾く)

4)は、事柄の説明。3)の時代の終わりを告げるかのような大きな事件やけんか(それ
  ぞれが自分の主張ばかりし合うような、幸せが壊れるようなフォルテで弾く)

5)は、また風景。最初と同じ外の激しい雨風を映す(現実の荒々しい人生と重ね合
  わせたフォルテで弾く)

6)心情。受け入れるしかない現実。絶望とあきらめ(弱々しい枯れていくようなピアノ
  で弾く)

みたいな〜。
この変な映画は誰も観ませんかね。たとえば、です(念には念のため)。

その中で、もっともっと細かく、「この和音のときに気分が変わった」とか「この音の形は期待感たっぷり」と音を分析して弾いていきますが、まずはおおまかに物語を作ってみるのがいいと思います。

作曲家が本当はどう作ったかを理解するためにはやはり最初に述べた様式やら作品背景を知る必要がありますし、必ずしもお話仕立てになっている訳ではありません。でもまずは正しさより、間違えてでも「想像力」を働かせる訓練をしてみて下さい。だってこれが一番の音楽の音楽たるゆえんですから。
大きい馬が走って来るようなとか、猫が歩いてるようなとか、部分的にそんな風に弾くだけでも違って来ます。

でも大人のレッスンでこういう話をしていると「そんなことより、早く間違っている音がないか聴いて欲しい!」とか「焦る感じって、だったら“速く!”って言って」と思われているのが、ありありとわかります(苦笑)。この狭間でいつも葛藤しています。

上の曲、皆さんだったらどんな物語を作ってみますか?