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2013年8月2日金曜日

「音楽に語らせるってどういう事ですか?」

タイトルの質問を受けました。
言われて初めて伝わっていない事を知りました。

曲を解釈するとき、作曲家、国、時代、作曲された時の作曲家の年齢、状況という作品背景と、様式や形式、和声と言った専門的な事と、それ以外に、「情景」を想像するという事があります。

様式などは決まった事ですが、この「情景」解釈は人によって違います。


たとえば、、、。
発想記号エスプレッシーヴォ(表現豊かに)4分の3拍子ニ短調の曲があったとします。

1)短調の激しいアルペッジョで始まる フォルテ
        ↓
2)ゆっくりの短調になる ピアノ
        ↓
3)明るい長調になる メゾフォルテ
        ↓
4)和音の連続の短調になる フォルテ
        ↓
5)最初の激しいアルペッジョの部分がまた出て来る フォルテ
        ↓
6)短調のまま、けれど静かに終わっていく ピアノ リタルダンド


この曲をとりあえず[愛する人とお別れした女性の映画]と仮定してみます。
すると上記の番号はこんな解釈が出来ます(たとえば、の一例です、念のため)


1)は、外の激しい雨風の風景描写(樹が揺れたり雨音が激しい感じのフォルテで弾く)

2)は、風景から心情へ。雨を見つめる横顔、別れ話に沈む女性(沈んだ心と別れのさび
  しさを思い詰めたようなピアノで弾く)

3)は、空想。恋人と踊ったり笑ったりした楽しかった時代にタイムスリップ(その頃の
  楽しい気持ち テンポよく弾むようにメゾフォルテで弾く)

4)は、事柄の説明。3)の時代の終わりを告げるかのような大きな事件やけんか(それ
  ぞれが自分の主張ばかりし合うような、幸せが壊れるようなフォルテで弾く)

5)は、また風景。最初と同じ外の激しい雨風を映す(現実の荒々しい人生と重ね合
  わせたフォルテで弾く)

6)心情。受け入れるしかない現実。絶望とあきらめ(弱々しい枯れていくようなピアノ
  で弾く)

みたいな〜。
この変な映画は誰も観ませんかね。たとえば、です(念には念のため)。

その中で、もっともっと細かく、「この和音のときに気分が変わった」とか「この音の形は期待感たっぷり」と音を分析して弾いていきますが、まずはおおまかに物語を作ってみるのがいいと思います。

作曲家が本当はどう作ったかを理解するためにはやはり最初に述べた様式やら作品背景を知る必要がありますし、必ずしもお話仕立てになっている訳ではありません。でもまずは正しさより、間違えてでも「想像力」を働かせる訓練をしてみて下さい。だってこれが一番の音楽の音楽たるゆえんですから。
大きい馬が走って来るようなとか、猫が歩いてるようなとか、部分的にそんな風に弾くだけでも違って来ます。

でも大人のレッスンでこういう話をしていると「そんなことより、早く間違っている音がないか聴いて欲しい!」とか「焦る感じって、だったら“速く!”って言って」と思われているのが、ありありとわかります(苦笑)。この狭間でいつも葛藤しています。

上の曲、皆さんだったらどんな物語を作ってみますか?

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