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2013年11月6日水曜日

(注)きびしい話 2

[きびしい話]をしたら止まらなくなっちゃったので、またもや苦い本音のお話をさせて下さい。きびしいのが嫌いな方は今日も読まないで下さい。


発表会で上手く出来なかったとき、ほぼ全員の方が「あがって弾けなかった、家では弾けてるのに」とおっしゃいます。けれど、そもそも弾けていない方が99%です。始めからわかっています。ほんとうにあがるだけが理由で弾けない方は1%です。最も「あがっても弾ける曲が弾ける曲」なのであがって弾けなかった、もそもそも弾けない結果です。本番は正直です。理由は曲が難し過ぎる事、そして基礎ができていない事です。


そうとわかっているなら前もって言ってくれれば、、、と思うかもしれませんが、言ってわかることならこんな事は起こりません(笑)。大人の方にこの事を理解していただくのは、ほんとうにほんとうに難しいのです。なぜなら、


•講師から見た「弾けている」と生徒さんが自分で思っている「弾けている」が大きく違うこと。自分の出している音を聴く訓練が十分されていないので、自分がどんな音楽を出力しているかわかっていなくて、とりあえず出力出来ていれば音楽になっている気になってしまいます。


•子供の場合、発表会の曲はほとんどが講師が決めるので、レベルがかけ離れていることはあまりありませんが、大人の方は『こんなのが弾きたい』と思ってピアノをはじめているので、思いが先に立ち、相当レベルが上の曲を選んでしまいます。


•ピアノは地道で根気のいる基礎の積み重ね練習が必要ですが、大人は「人生先が長くない」と思っているので、そんな事をするより、好きな曲だけをやるのが近道と思ってしまっています。子供は将来楽しむために大人は今楽しむために習っています。


•長年培って来た自分のやり方があるので、「弾けないからこっちにしましょう」と、10レベル下の曲をすすめられることに慣れていない上、自分では弾けてると思っているので、やる気がなくなってしまいます。また、子供と違って、下手に曲を知っているので『それらしく』出来たら終わりで根気がありません。


•これは子供も同じですが、音符が多い曲や長い曲が「偉い!」と思ってしまい、そう言うのを弾かないとコンプレックスを感じてしまいます。早口言葉よりやなせたかしさんのわかりやすい詩の方がどれほど心を打つことでしょ
う。


•大人は集中力がありませんので、子供のように練習しないけど本番は良かった、という事は100%あり得ません。一流のスポーツ選手でさえ「普段通りに出来る」ことを目標にするくらい普段通りに出来る事は至難の業なのです。大人は、普段通りには出来ないのを前提に、曲を選ぶ段階、練習の段階から考える必要があります。


•基礎ができていない、の中には上記のもののほか、ちゃんと意識的に力を抜いて弾く事が出来ていないということがあります。家では力が抜けているけど本番は力が入る、という方は本当の意味で脱力が出来ていません。緊張して体が硬くなる、のは動物全員です。大事な場面では普通力は入るものなのです。要するに、弾けてる人は硬くならなくて自分は硬くなるのではなく、弾けてる人は緊張した中でも力を抜ける力をもっていて、自分にはその力が足りないのです。力が抜ける基礎練習をするしかありません。(言っときますが、私は涙ぐましい努力をしています)


「実力にあった曲を弾いた方が、本人も満足するし、聴いている方も楽しめる」というのは講師だけの思いのようです。「先生選んで下さい」という方でも、実際こちらが選んだ曲を前にすると、あまりの簡単さにがっかりされて別の曲を持って来られます。こちらから説得するのはほぼ不可能です。

ただ、大人の方は子供と違って、まだ弾けないような曲に挑戦し、弾けるようになるのも事実です。頭で弾く大人には子供とは別の可能性があることを、知りました。結果的に発表会でどうなるか、そんなこと気にせず賭ける価値が大いにあるのも、大人の趣味のピアノです。


それに、いつも申し上げている通り、聴く人がいる事を押さえてさえいれば何でもありです。人生を楽しむ手段として、表現の手段として、まして自分でお金を出して発表会に出ているのですから、失敗も一人よがりも自由です。結局、自分がどう弾いて、聴いている人がそれをどう思って、だからどうする、という事については、一ピアノ教師が口出しする域を超えています。たかがピアノですが、やり方はその方の生き方そのもので、強制される物ではありません。私がそうだったように、自分で気づいたとき、そうしたかったらする、したくなかったらしない、の大人の選択をするしかないでしょう。



だからこそ、自分は失敗も覚悟で挑戦をしようとしているのか、レベル相当の曲をきちんと弾きたいのか、しっかり自覚して曲を選択した上で、出演されるのが望ましいと思います。そうしたら『こんなはずじゃなかった』というショックは少し軽減されます。

そして何度も言うようですが、「聴いてくださる方」「弾いている方」の気持ちに心を寄せましょう。貴重な時間に自分の下手なピアノを聴いて下さる方への感謝の気持ちと、緊張する中、勇気を持って人前で演奏する方への暖かい応援が、和やかでありながら質の高い発表会を作り出します。
上手でも下手でも、弾きっぱなし、批判づくし、すごいの探し、は美しい音楽と異質のものです。











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